西村兄妹キモノ店

日々のお話

 

本に見るキモノの世界(2)

2020.05.02

 

漫画だけでなく、小説にも

「キモノ」の世界を描く作品が多々あります。

日頃からキモノを愛する作家さんたちの

エッセイも数多く出版され、

憧れの着こなしについて

独自の視点や感性から綴られる
言葉から気づきが得られるのが魅力です。

 

まずは、入門書として

白川紺子著「下鴨アンティーク」シリーズを。

 

shimogamo

 

集英社オレンジ文庫から出ている

いわゆる“ラノベ”ですが、

京都・下鴨を舞台に

京都の四季や京ことばで描かれる

人間模様は決してライトではありません。

アンティーク着物を通して

次々と思わぬ出来事に巻き込まれていく

SF(少し不思議)小説でもあります。

 

 

続いて、時代小説の入り口として

読みやすく面白いのが

「あきない世傳 金と銀」高田郁著。

 

akinai

 

大阪天満の呉服店「五鈴屋」と

その奉公人・幸の出世物語です。

商い戦国時代ともいわれる困難な時代に

「三方良し」の精神で

どのような手立てで商売を拡げていくのか。

着物の新しい色目や縮緬織の開発、

前結びの帯やコーディネートの提案、

節季事の支払いシステムの導入など

当時の大阪や江戸の生活が

リアルに描かれているのはもちろん、

ドラマチックな挑戦の数々に

胸が熱くなるシリーズです。

 

そして、同じく時代小説で

映画化もされた「序の舞」

宮尾登美子作品の中で

最も感銘を受けた本です。

 

jonomai

 

女性として初めて文化勲章を受章した

日本画家の上村松園が

モデルであることはあまりにも有名な話。

京都に生まれた主人公の津也が

幼少期に出合った日本画。

女性が画家になることが

難しかった明治期にあって、

壮絶な努力・経験を重ねながら

画壇での存在感を高めていく様が

緻密かつ大胆に描かれています。

当時は誰もが着物を着ていた時代なので、

着物の描写も多々あり、

その姿を想像するだけでも楽しめます。

 

ある方のお宅で上村松園さんの

美人画を間近に見せて頂いたことがあります。

髪の毛の生え際、うぶ毛の美しさ、

静かに燃えるような目、

着物を着た人物の肩や腰の線の繊細さ、

しばらく瞬きも忘れ食い入るように

見入っていたことを記憶しています。

 

長編ですが時間を忘れて読みふけり、

何度も読み返すほど好きな一冊です。

 

時間がある今だからこそ

普段読まないジャンルを手に取るチャンス、

本を片手に、#STAY HOME を

楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

MIZUHO